2023年9月23日(土)、4年ぶりに「色彩フォーラム」を対面で開催しました。
ゲストのロマナ&アンドリーは、日本でも『戦争が町にやってくる』(ブロンズ新社刊)が話題を呼んだウクライナの絵本作家ユニットです。今回の企画は、以前から親交のあるブロンズ新社が、創立40周年を記念しお二人を招聘するということで、同社のご協力により実現しました。
当日は、4歳~高校生まで18名の子どもたち、韓国の協会員やウクライナから避難されている方々なども参加し、年齢も国籍もさまざまな約90名の皆さんがワークショップを楽しみました。
第1部から第3部までの様子を、写真や参加者のアンケートなどで振り返りたいと思います。
色彩フォーラム’23
9月23日(祝)@渋谷
第1部 大人も子どもも一緒にワークショップ
「1つの色、1本の線から始まる、自分だけのワンダフルワールド」
ロマナ&アンドリーの新刊『旅するわたしたち On the Move』(ブロンズ新社刊)は、鳥も魚も私たち人間も太古から地球の上を自由に移動し交流してきたという絵本。その壮大な物語をテーマに、ロマナ&アンドリーがファシリテートするワークショップです。
各テーブルに広げられた模造紙にはあらかじめ「道」が。前日に彼らが手書きで描きました。
今回のワークのために準備された、絵本に描かれたモチーフのシールやステンシル。
ワークショップスタート! 道の周りに思い思いの世界を描いていきます。
大人も子どもも一緒に表現を楽しみました。
各テーブル毎に描いた絵を繋げて貼り出すと圧巻! みんなの道が繋がりました!
みんなの絵を鑑賞。色々な世界があって楽しいね。
どんな思いで描いたのか、何名かの方にシェアしていただきました。
ロマナさん、アンドリーさん、楽しいワークをありがとうございました!
~参加者の感想~
- 人形や動物などのテンプレートが珍しく、子ども達が喜んで使っていました。2人と少し言葉を交わしたりコミュニケーションがとれて楽しかったです。人それぞれに旅する道が違っていて、アートで繋がれる時間は良いなと思いました。(30代 女性)
- 久しぶりに子どもにかえって自由に描く体験は大変楽しい時間でした。テーブルを囲んだ4人が好きなように描いて、そこに一つの世界が生まれる面白さも味わいました。そして、ワークショップの参加者全員がバラバラに描いた絵が1本の道でつながって一つの大きな世界を作り上げる創造の面白さと意義も感じました。他の方々の発表では私にはない感覚の声を聞かせていただき、見て、聞いて、新鮮な発見と感動に溢れたワークショップでした。世界がこうしてこの絵のように、平和的で調和された世界になることを教えてくれようでした。(60代 男性)
第2部 末永蒼生+ロマナ&アンドリーのトークセッション
「ウクライナと日本、アートを通して幸せの種を蒔く」
今も戦争のただ中にあるウクライナで、爆撃のたびにシェルターに避難しながら創作、そして子ども対象のワークショップも続けてきたお二人と、長年「戦争と平和に関する子どもの絵」の研究をしてきた末永さんとのトークセッションです。自由な表現は、人の幸せや世界の平和につながる“種”になりうるのか……、共に考える時間になりました。
末永さんから、「戦争と平和に関する子どもの絵」についてのお話し。
ロマナ&アンドリーから、創作活動や子どもたちとのワークショップについてのお話し。
ウクライナの方から、どのような状況で日本に避難してきたのか、そして現在の生活についてお話しを伺いました。
第二部の一部を文字起こししました。ロマナ&アンドリーがなぜ新刊をテーマにした子どもたちのワークショップを行っているのか、また、当日参加してくださったウクライナの方からのお話しです。
こちらからお読みください(PDFが開きます)▶▶▶
ブロンズ新社代表の若月眞知子さん。ウクライナからの出国許可を得ること、そして実際に日本に来れるまでに大変なご苦労があったそうです。
当日はロマナさんのお誕生日だったので、みんなでハッピーバースデーでお祝い。お返しに聞かせていただいたウクライナの歌は、何だか懐かしく暖かい気持ちになりました。
~参加者の感想~
- アンドリーさんが「戦争を続けていくなかで、動きを止めてはいけないと思った。ウクライナには安全な場所はどこにもない」という言葉がとても印象に残っています。どんな状況でも歩みを止めない人もいれば、こんなに安全な場所にいても、何かを理由に止まったままの人もいる。わたしは……? いま。なにをやれてるかな? 歩けてるかな? 色々と考える時間をもてました。(40代 女性)
- 日本で出版されることや、出国入国することも、当たり前ではないことが改めて聞けて、自由に行き来出来る分断のない世界になって欲しいと思います。(50代 女性)
- 戦争体験の生の声をきかせていただき、頭ではなく心臓に直接声が届いてきて苦しい気持ちになったけど貴重な経験になりました。戦争というネガティブな経験をされていながらも、その中で自分がやりたいことをやめない気持ちへと昇華させていく心に感動しました。(40代 女性)
- 辛い時も、そのままの自分を表現することの大切さ。どんな状態でも心のダメージを色彩表現で軌道修正できて、少しずつでも気持ちを前に進めながらいられるのは、やっぱりとても心強い事だと感じました。(60代 女性)
●別室の子どものアトリエ●
第2部の間、子どもたちは別室の自由創作アトリエへ。第1部で自分の心の世界がみんなと繋がっていることを肌で感じ、安心できたからか、いつもよりも落ち着いて、集中して、思い思いに自分の表現を楽しめたようです。
第3部 協会員のための表現と全体シェア
「こころの戦争、こころの平和」
第3部は、「こころの戦争、こころの平和」をテーマにホームワークで表現してきたぬり絵を用いてのセッションの時間です。第1部、第2部で体験したことも踏まえて、一人ひとりの心のなかにある戦争と平和について語り合いました。
中には、コロナ禍に学びはじめて、「色彩学校」の対面のセッションに参加するのははじめて! という方も。
楽しい時間でした。
第3部には、約40名の方が参加。日本の参加者には韓国のぬり絵を、韓国からの参加者には日本のぬり絵を塗ってもらいました。
韓国の協会員の皆さん。9名の方が参加されました。
グループシェア。やっぱり、対面のセッションは盛り上がりますね!
全体シェアでは、各グループのファシリテーターから、グループで話しあわれたことについてシェアしました。
一人ひとりにとっての「こころの戦争と平和」はもちろん違うけれど、表現を介すると共感や理解がうまれます。
笑顔の末永さん。久しぶりに皆さんと対面でお話しできて、エネルギーをもらったそうです。
~参加者の感想~
- 先の社会情勢の不安を抱える中で、自分が何を大切にしているのかを考える機会が日々たくさんあります。今回はそれを色彩表現で客観視できたこと、皆と共有できたことで、また新たな発見がありました。(60代 女性)
- 戦争と平和は表裏一体という方がいてハッとしました。苦しみがあるからこそ、生きている実感があるというという気持ちは腑に落ちました。また、辛すぎて受け止められない気持ちの時もあると思います。そのように思ってしまう気持ちも大事にしてあげたいなと自分に思いました。(40代 女性)
- 自分の意志ではなく、他者の手によって分断されることで、心の中に戦争が起きていくのかもしれません。とすると、逆に他者の力を借りて「繋げる」ことを続けていくことで、心の平和が訪れてくるのではないか?
怒りや悲しみや自分の感情を力強く色で吐き出すことができるから、だからこそ解放されて心穏やかにリラックスして平和をテーマにした安らぎの色を塗っていくことができる。感情はコインの裏表のように存在する。
自分が何を「不快」と感じるのかがわからなければ、自分にとっての「快」もわからない。
そんなことを感じて、私の中の心の奥の奥底でそれはそれは熱い感情がこみあげてきました。ZOOMでしかあったことのないメンバーにもあえて嬉しかったなぁ。本当にありがとうございました!(40代 女性)
以上が当日のレポートです。
なお、今回、ロマナ&アンドリーが来日し、各地で行ったワークショップなどの様子が新聞にも掲載されました。「色彩フォーラム」の様子や末永さんのコメントも載っているのでご紹介します。
東京新聞記事(2023年10月4日)▶▶▶
毎日新聞(2023年10月18日)※有料記事です ▶▶▶
皆さんもこの機会に、家族や友人たちと「こころの戦争や平和」について表現し、話してみてはいかがでしょうか?
(報告:「国際アートセラピー色彩心理協会」事務局 馬目佳世子)