【末永蒼生の色彩治療体験記】

子どもの頃からどちらかというと病弱だった僕は細々と病気をしてきた。誕生間もなくの歩行障害に始まり小児結核では一年休学、また耳鼻科通いも度々だった。大人になってからも虫垂炎ではひどい腹膜炎になり手遅れ寸前だった。アレルギー性鼻炎は年季が入っているし中年期になってからは腎臓の症状で3年ほど鍼灸治療のお世話になり、高齢期になってからも大腸ポリープ、びらん性胃炎、さらに前立腺肥大、膀胱嚢腫、重い椎間板ヘルニアで苦しんだりした。かつて鍼灸の先生には「末永さんって、“多病息災”だよね(笑)」と言われたことがあるけれど、よくこれまで命を永らえてきたものだと思う。
そのせいで健康オタクといっていいほどいろんな健康法を試し、すでに趣味の領域に入っていた。そんな中、病気の都度僕を助けてくれたものの一つが、色彩の力だったと思う。前置きが長くなったけれど、自分の病気遍歴が「色彩治療」の世界に導いてくれたのだと思っている。

胃の痛みで集中的な色彩治療を開始

この9ヶ月ほど僕が集中して受けている治療法は松山にある色彩研究所の加島春来院長が鍼灸師としての経験を発展させ創案された色彩治療だ。5〜6年ほど前にご縁があり、松山まで泊りがけで治療を受けに行った。その時は独自に開発されたカラーチップをツボに貼ってもらい腰痛がすぐに軽減し効果を感じたし、何より加島院長のものすごいパワーに触れることで体調が好転する実感を抱いた。その後は必要に応じて松山の研究所と提携している東京の色彩治療院に通っていた。
今回、集中的に色彩治療を受けることにした経緯は、昨年(2020年)5月頃に、数年前のびらん性胃炎の時と似た痛みで眠れない夜が続いたからだ。
加島研究所に連絡したところ院長のお孫さんで往診治療もやっている加島隆徳先生が診てくださることになった。「では全身写真を撮影してメールで送ってください。リモート治療できますから」ということだった。
「ええっ、写真ですか?」と思いつつも、写真をメールで送ると早速電話があり「胃や十二指腸に潰瘍が起きています。精神的なトラウマが関係しているようです。このままだと癌として進むので、往診で集中的に治療しましょうか。改善するので大丈夫です。」ということだった。
その一言を耳にした瞬間、僕の中では「来たな!」という直感が働いた。長年の精神的な課題が身体のサインとして現れていることをうすうす感じていただけに納得がいったのだ。すぐに集中治療に取り組む気になったのは、心身両面からアプローチする治療観がピンときたからだった。

皮膚を通して潜在意識に耳を傾ける

もう一つ、色彩治療の診断方法で興味を持ったのは症状の原因にアプローチする際に、皮膚に触れながら患者と加島先生の潜在意識の回路をつないでいくという珍しい方法だった。僕が「症状の原因は何でしょうか?」と訊ねると「今から潜在意識に訊いてみます。」と言いながら、例えば「今回はウィルスが影響していますから、その治療を行います。」などという答えが返ってきたりする。いわば皮膚は意識と無意識をつなぐインターフェースといったらいいだろうか。
このように色彩治療ではカラーチップを皮膚上のツボや患部に貼りながらそこから潜在意識や身体深部へと影響を与え自己治癒力を引きだしていく。
創案者の加島院長始め研究所の治療家がこれまで数十年をかけて多くの臨床的なデータを積み重ね、2万5000種類に余る病気症状に対応する色彩を特定してきたという。これは実に驚くべき発見であることに加え、そのメカニズムを健康に結びつける治療技術が開発されていることは素晴らしいとしか言いようがない。

色彩の刺激と身体

僕が何よりこの治療方法に興味を持ったのは、色彩の効果を最大限活かしているところだ。というのも自分でもこれまで長年に渡り色彩を使ったセラピーを通して色の力を実感してきたことがある。そしてここで注目すべきは色というのは眼で感受するのみならず、身体の皮膚細胞に色彩受容体があるということ。この事実はこれまでも文献からだけでなく実感として認識していた。
実際、「子どものアトリエ」に来る子どもたちは絵の具の色を体に直接塗りつけたりするボディーペインティングが大好きだし、「色彩学校」の色彩ワークに参加する受講生も、とにかく色を表現していると多少の体調不良は好転していくということが少なからずあったからだ。
2006年に「色彩学校」受講生の協力を得て、恒川洋医師(当時・東海ホリスティック医学振興会会長)と協働して色彩が自律神経や免疫力にどのように作用するかを調査したことがあった。自由に色を選んで塗ることにより、血圧や脈拍、免疫細胞などの数値が各個人レベルで適正化されるという結果を得ることができた。もちろん、こういったことだけで色彩が身体に与える作用を短絡的に断定できるわけではないが、少なくとも色彩刺激がどのように身体に関わっているか、またどんな作用があるのかの関心を深めるきっかけになった。そんな中で今回の色彩治療における臨床的なエビデンスへの興味につながった気がしている。

色彩治療の歴史と現在

皮膚に色彩受容体があるということは昔から知られていた。100年ほど前に色光、つまり光線を当てて結核性の皮膚病治療に効果を上げた功績でデンマークのニールス・フィンセンがノーベル賞を受賞し、近代光線療法の父と呼ばれている。その後世界各地で色彩や光線による治療法が研究されてきているが、ある時期からは様々な抗生物質が発見され医学界は化学薬品の開発に熱心になった。光線治療は下火になっていったのだ。
しかし色彩による副作用の少ない治療法は細々と継続されていて、その歴史はジェイコブ・リバーマン著『光の医学』(日本教文社1996)に詳しい。現代医学でも新生児黄疸の治療に青色光線が使われることは知られている。日本でも現在、東京・新宿の光線研究所が診療所を持っているし、かつて私もそこで光線治療器を購入し愛用していたことがある。読者の中には鍼灸治療院などで光線治療器を見かけたことがあるのではないだろうか。あれは単に体を温めるためだけのものではなく、症状によって光線の波長を調節しているものなのだ。
このような色彩医学とも言える研究史を振り返る時に、加島先生が行っている色彩治療が極めて実用的な、かつ大掛かりな装置に頼らなくとも施術できるということに感動すら覚える。色彩治療を受ける中で教えてもらったのだが、近年、皮膚に色彩を当てる治療効果を裏付けるような皮膚の機能が日本の研究者により発見されている。それは皮膚にも色彩受容体があるということにとどまらず、皮膚自身が必要な色を識別することで自己治癒力を働かせているという。詳しくは傳田光洋氏の著書『驚きの皮膚』『第3の脳』で知ることができる。
また僕としては創案者の加島春来先生が鍼灸治療の専門家であり、心身不二ともいえる東洋医学的な生命観をベースにしているところも共感を覚える。
自分がこの30年間、「色彩学校」の活動と並行して統合医療(西洋医学や東洋医学、その他の代替療法を統合した医療)の団体に関わってきた経験からも、色の波動を活かしたホリスティックな健康観を持つ治療法に巡り合ったことは嬉しいかぎりだ。子どもの頃から画家の父親の絵に囲まれ、色に親しむ環境にあった僕にとってこの世界に満ち溢れる色彩を享受できることの喜び、有り難さを感じずにはいられない。現在、加島先生を中心にした治療家や医師たちのネットワーク「国際色彩診断治療研究会」があり実践が拡がっているという。コロナの時代、体調不安に悩む人に色の力が広く知られていくことを期待したい。

病気を治すのは自分、そのための心身との対話

さて僕自身の治療だが、毎週の往診を受けて約2ヶ月ほどで胃腸の症状は改善し今は隔週のペースで健康維持として受診している。毎回受診するたびに60枚余りのカラーチップを全身に貼ってもらっている。面白いことに治療を継続していると子どもの頃からの病気の歴史が身体上に再浮上し、その層を一つずつほぐしていくかのような感覚がある。調子が良い日もあれば不具合が起きる日もある。心も体も生命の波そのものなのだと感じる。その波に敏感に反応しながら、体を休めたり気力を上げたりすること、それが潜在意識も含めた自分を丸ごと生きることなんだと感じている。
それにしても西洋医学、東洋医学、代替医療、どんな治療法であっても絶対というものはありえない。この世に同じ人間はいないし同じ人間でも刻々と変化していく。そうである以上、その時々の症状と治療法とのマッチング効果は違うはずだ。
加島隆徳先生も「この色彩治療がどのように効果が出るかは、患者さん自身の潜在意識との対話次第なんです。それによって自己肯定感が高まると治療にもいい影響があります。治すのは患者さん自身で、私がやることはそれをサポートすることですから」と常々話されている。治療任せにせず自らを深く知ることから自己治癒が始まるのだとすれば、これは希望だと言える。つまり、深層から響いてくる無意識の言葉を聴き取ることから始まるのだ。思うに、僕はこれまで様々な病気体験をしながらその時々に自分と語らうための機会を与えられていたのだと思う。“多病息災”ってそういうことか……。(笑)
さて、冒頭に述べた写真を介してのリモートによる色彩治療のことだが、「えー、そんなことが可能なの?」と不思議に思う方もあるのではないだろうか。僕も最初は半信半疑だったが、実際には効果を感じている。この色彩治療、僕も奥深い体験の一歩を踏み出したばかりというところ。その辺りのことに関しては、また稿をあらためたいと思う。

●加島隆徳先生インタビュー動画

画面をクリックするとYouTubeが開きます。

●色彩治療についてのお問合せは…
加島隆徳先生は現在、松山の本院の他、東京、名古屋、大阪、広島など各地で治療活動をされています。
(株)東洋医学健康センター 加島色彩研究所
Tel: 089-921-0883
E-mail: takanori1226@gol.com


★協会員特典★
ご予約の際に「国際アートセラピー色彩心理協会」の協会員であることを伝えていただくと、「痛みに効くシール」のプレゼントがあります!

アンケートのお願い】
この記事に関して、感想やメッセージなどございましたら、ぜひ皆さんの声をお聞かせください。 アンケートはこちらから>>>

●末永蒼生・色彩治療体験記の参考文献:『光の医学』(ジェイコブ・リバーマン 日本教文社1996)/『驚きの皮膚』(傳田光洋 講談社2015)/『第3の脳』(傳田光洋 朝日出版社2007)/『フロイト 精神の考古学者』(鈴木晶 河出書房新社1998)/「国際色彩診断治療研究会」ホームページ/『心の病気にならない色彩セラピー』(末永蒼生 PHP研究所2012)