【オンラインアトリエ】

石井陽子さん(「子どものアトリエ・アートランド」会員・認定子どもアート療法士)

社会と断絶されて孤立感を感じでいる時に、オンラインアトリエで得られた安心感。

「子どものアトリエ・アートランド」(東京青山/主宰・末永蒼生)では、東京に最初の緊急事態宣言が出された1か月後、2020年4月19日から、オンラインで参加してもらうアトリエ「空とぶアトリエ」をスタートさせました。子どもたちは、自宅に届いた画材セットを使って思い思いに創作し、Zoomの画面を通して担当カウンセラーやクラスのお友達と、作品について説明しあったり、最近の出来事や気分を話したり、コミュニケーションを楽しみます。
当時は、学校にも行けず、家に引きこもる生活の中、家族以外とコミュニケーションが取れる場として、会員の約半数のご家族が参加してくださいました。
その後、緊急事態宣言が解除され、ほとんどの会員は再開した対面のアトリエに戻ってきましたが、今も何組かの家族が継続してオンラインアトリエを利用しています。

今回は、石井陽子さん(息子・宏旺君12才)に、オンラインアトリエに参加した感想やこの一年の宏旺君の成長などについて伺いたいと思います。

アトリエの時間は、日常生活から離れてなにかを創造する大切な時間。

コロナ禍の一年、石井さん家族はどのように過ごし、その中でオンラインアトリエはどのような存在だったのでしょうか。

石井「去年の3月に緊急事態宣言が出された直後から、家庭の事情により、東京を離れ、家族で熊本県天草市にある夫の実家に向かいました。
天草の大自然の中での生活は、コロナ禍の喧騒から離れて、まるで充電しているような感覚がありましたが、東京に戻ってからは、変わらない厳しい時世に戸惑い、時々不安不満愚痴を吐き合いながら、いろいろなことを我慢する日々を過ごしています。

宏旺は身体があまり強くないので、感染対策にはとても気を使っています。
現在は、学校や他の習い事などもオンラインの方が増えているのですが、大人が考える以上に子どもの順応性は高く、オンライン授業も難なく受け入れ、むしろ楽しんでいる様子です。

『アートランド』は、いち早くオンライン化してくれて、遠く離れた天草からでも参加出来たので、とてもありがたかったです。
アトリエの時間は、宏旺だけでなく私にとっても、日常生活から離れてなにかを創造する大切な時間です。親子で一緒に創作する時もあれば、それぞれが好きなやり方でアウトプットする時もあるのですが、特にコロナ禍で不安や恐怖の生活を強いられている中、アトリエの時間は無になり、自分を取り戻せる時間でした。
天草にいても、東京の自粛生活でも、社会と遮断されて孤立しているような感覚もありましたが、オンラインアトリエでつながれたことで、安心感がありました」。

▲(右)Zoomの画面ごしに、絵を描くことに集中している宏旺君とぬり絵を楽しんでいる陽子さん。(左)その様子を見守る宇佐田カウンセラー。

自分の世界に没頭することができるオンラインアトリエ

「オンラインアトリエ」と「対面アトリエ」の違いについては、どのように感じられていますか?

石井「“対面アトリエ”では、先生やお友達の反応をすぐ感じられたり、他の子が創作している物や様子を参考にして自分の創作にも取り入れることができるように思います。
一方、“オンラインアトリエ”では、集中して、自分の世界に没頭することができるようです。宏旺は以前よりも細密で、一つの世界観が感じられる絵を描くようになったように思います」。

自分の世界を作り上げるということは、自立心が芽生え、自分で自分をプロデュースする力にもつながります。宏旺君、そして石井さん自身、この一年でどのように成長されたのでしょうか。

石井「宏旺は、どんな状況・環境でも柔軟に受け止め、たくましくなったように思います。一日を自宅でどう過ごすか、どういう一日に自分がするかについて、自由に決定する力(自立心)が身についたように感じています」。

▲(左)オンラインアトリエでは、集中して何枚も何枚も鉛筆画を描きあげます。(右)宏旺君のある日のスケジュールボード。

「私自身については、昨年の4月のタイミングで『色彩学校』の『ライフサイクルアートセラピーコース』を受講したことに、大きく影響を受けました。
何より大事なことは何か……、どう生きたいか、どう生きるのか……を考える貴重な時期となり、確固たる軸を再認識したように思います。

また、東京天草間往復3000キロ×2回の車での旅と疎開生活は、私達家族に貴重な経験をさせてくれました。家族で濃密な時を過ごしている中で、主人や子どもたちの柔軟さやたくましくさ、彼らの生き様からも学ばせてもらいました。
今も大なり小なりのやりたいことを家族で何でも話しています。そうすることで、一日一日を大切にする、希望を持ち続けて生きることにつながっていくのではないかと思っています」。

▲(左)天草で充電中の宏旺君、兄の利宗君、陽子さん。(右)音楽教室の課題で『春の小川』を聴きながらイメージを描いた宏旺君の作品。「最近は学校や塾の課題にも積極的に取り組むようになり成長を感じます」と陽子さん。

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