春の薬膳レシピ

春の陽気を心身に巡らせるお助け食材

佐久本 恵 (国際中医薬膳士/「色彩学校」専任講師

『薬膳』すべての食材に効能があり、その時の体調に合わせて食材を選び体をととのえるやり方。
日々の食卓が『薬膳』になり、皆さんの健康につながりますように。

コロナウィルスと共に振り返る“食生活”。食の記録は心身の写し鏡になっているかも!?

世界中にコロナウィルスが感染拡大するようになり、もう1年が経ってしまいました。皆さんの生活も大きく変化したことがおありの事と思います。
私のこの一年を“食”に絞って振り返ってみますと、去年緊急事態宣言が出た4月頃から食への関心が薄れ(食いしん坊の私が関心を持てないとは!! 涙)、お腹に入れば何でもよいと冷蔵庫にあるものを簡単に食べることをしていたように思います。
完全栄養食と言われる卵を「ゆで卵」にしてやたらと食べていたような記憶が……。そして野菜は青汁を飲めばいいみたいな感じで過ごしていて、アトリエ運営に関するコロナ対策を考えることが優先順位に上がり(今回の特集でインタビュー記事に起こしていただきましたので、未読の方はよろしければお読みくださると嬉しいです)、自分の体のことは完全に脇のほうに追いやってしまっていました。

こういう風な状態になると心身のバランスが崩れていくものですね。
5月にはお腹を下し(私にとっては珍しいこと!)、鼻水が止まらなくなり、耳鼻科で蓄膿症と診断がついたり、歯痛から来る激しい頭痛で親知らずを緊急抜歯することになったり……と、体のあちこちから不調のサインが出てきたのでした。

春、夏、秋……と季節によって、
体が食べたいと欲するものを食していました。

並べてみるとどの症状も膿出し(毒出し)しているような症状です。そんな状態が続いていた時、食べたいと欲したのは、山芋と千切りキャベツのお好み焼き(肉無しのヘルシーバージョン)。大きなフライパンに1枚焼いて何回にも分けて食べていました。キャベツと山芋は消化がよく、滋養強壮に役立つ食材。咀嚼をあまりしなくても大丈夫なところにも助けられていました。
夏にはうなぎや鶏肉を食べたくなり(暑さに負けない強壮力を欲していたのかも)、秋には平年以上にマスカットと柿を摂取して(肺や気管支系への潤い効果や清熱効果、温熱効果で季節の変わり目を調整していた!?)。
そして冬の今は、妙にお米や麺といった炭水化物が食べたい………、体の基礎体力をつける力と炭水化物系の食材が大体持っている安らぎ効果から来ている欲求かなと自己分析しています。

この1年は薬膳の考えを生活に取り入れようと頭優位で食を調えるというよりも、自分の内側の体の欲求に従って“食”してきた私。途中体調不良に陥ったりして反省する点もありましたが、振り返りながら感じるのは、自然が用意してくれる季節の恵みを体内に摂取する事で、息苦しいマスク生活に合わせた季節の変化に体を順応させていたのだと、今回この原稿を書きながら気づきました。
自分の体を自然の摂理に抗うことなく、流れをよくしてくれるものが“食べもの”なのかもしれないと、新たな考えが宿った“食の振り返り”です。

今回は「春」の食事に取り入れてもらえたらと思う料理をひと月ごとにご紹介

2月 体に入り込む冷え対策と血行促進

節分を境に暦の上では春になります。寒い日もあるけれど、暖かな日も、日に日に増え、冷えて固まっている体が、麗らかな光の中伸びをするような感覚を味わえる今日この頃です。2月の特徴は、朝晩の寒さと日中の気温の寒暖差が大きくなること。気温の上昇と気温の低下の乱高下によって肩こり、頭痛・腰痛など血行不良による痛みが不調を生じさせやすくなると言われています。

冷え対策と血行促進を促すドリンクで春支度。美腸効果も狙っていきます。

ココアドリンク
with オリゴ糖漬けクコの実

ピュアココアは血行促進、抗酸化、抗菌作用、食物繊維、鉄、亜鉛、マグネシウムなどこの季節に必要なミネラルなども豊富に含まれています。
またクコの実(ゴジベリー)は、ビタミン豊富で血を補い目を養い、肺を潤し咳を鎮める効果があると言われています。そのクコの実をオリゴ糖漬けにしてココアと一緒にドリンクに添えることで、腸内で食物繊維の善玉菌のエサとなる役割を補助します。
チョコレートピール系の甘酸っぱさとほろ苦さを味わうドリンクです。

<材料>1人分
ピュアココア 小さじ山もり2杯
水または牛乳 150㎖
クコの実 お好み
オリゴ糖 お好み

  1. <事前準備>オリゴ糖を適量お皿に出し、その中にクコの実を浸しておきましょう。ひと晩くらい経つと、くこの実が柔らかくなってきます。(冒頭の写真)
  2. カップの中に、ココアを入れ、事前準備したオリゴ糖とクコの実を加えてよく練る。
  3. ココアを美味しく入れるポイントはこの練る作業ですので、粉っぽさが無くなるように練ってください。
  4. 2. に温めた牛乳かお湯を注ぐ。

3月 肝機能を補助することで心身のストレスケアに役立てます

3月20日の春分の頃に太陽が春の位置に移動して、寒くて、溜め込む【陰】から、暖かく、代謝する【陽】へと、エネルギーの動きが大きく転換していく時です。
この季節の困りごとは、気持ちは先走るけれども、体は陽の気に乗り切れていないという心身のアンバランスさ。そこから来る苛立ちや焦りや怒り……といった感情が沸き起こる事。『肝』機能が春の調整役として頑張ってくれる時季ですので『肝』を補助して、上手に心身の調整をしていきましょう。

タコと芽キャベツのグリル

タコは肝臓機能を強化するタウリンなどのアミノ酸を豊富に含み、肝の養生にもってこいの食材。加えてビタミン・亜鉛などのミネラルもたくさん含み、心の栄養にも良いと言われているおススメ食材です。
そして芽キャベツは、胃の健康に役立つキャベジン効果と、出物・腫物・便秘改善に役立つ排出効果があります。胃を調えることで体全体の気力回復に繋げます。
芽キャベツで排出を助け、タコで肝機能強化していく、3月に食べてもらいたい一品です。

<材料>1人分
芽キャベツ 5~6個
たこ  60g
小麦粉 少々
オリーブオイル 適量
ニンニク 1かけ
鷹の爪  1/2本

白こしょう
しょうゆ

  1. 芽キャベツを1口大にカット(半分か1/4カット)、ニンニクみじん切り、鷹の爪輪切りにする。
  2. たこを薄切りし、小麦粉を薄く纏わせる。
  3. フライパンにオリーブオイルを引き、ニンニクと鷹の爪を入れ香りを立たせる。
  4. 芽キャベツを入れ炒め、途中でタコも入れ、ざっと炒める。
  5. 全体に塩コショウして、鍋肌から醤油を回し入れ醤油の香りを風味づけする。
    ※ブロッコリーや菜の花など他の野菜を加えても美味しいです。

4月 脳腸相関の巡りを意識して整えていきましょう

春の特徴である強い風に吹かれて舞い込む、花粉や黄砂などから引き起こされるアレルギー反応。それに加え、引き続きコロナウィルスと共存する生活も続くと思われるので、【腸】を快活にし免疫力の底力を高めておくことはとっても大事なこと。
また脳腸相関の良い循環【腸が整うとリラックスして過ごせる⇔リラックスして過ごせると腸の働きが良くなる】に体を持っていくことで、より健やかに過ごせてもらえたらと思います。

キノコと切干大根の
オープンオムレツ

キノコは食物繊維もビタミンDもたっぷりの幸せホルモン・セロトニンを生み出すお助け食材。そして合わせる切干大根は食物繊維やアミラーゼ、ジアスターゼをたっぷり含み、消火器の働きを良くしてくれる食材。またビタミンB群で代謝促進、葉酸・カルシウム・亜鉛・マグネシウムなどが慢性疲労を改善してくれる……という、地味な存在だけど、とても栄養価が高いパワーフードです。

<材料>2人前
きのこミックス 150g
*3種類以上のキノコを組み合わせると美味しさアップ
切干大根 10g
出汁 30㎖
*顆粒出汁でも構いません
人参 1/2本
ジャガイモ 1/2個
卵 3個
牛乳 50㎖
マヨネーズ 大匙1
ピザ用シュレッドチーズ 適量
オリーブオイル 適量

バルサミコ酢

  1. 切干大根を水につけ、戻す。
  2. キノコを一口大に切り、オリーブオイルをひいたフライパンで炒める。キノコの水分が出てきてしなっとしてきたら、小さじ1の塩を振り、バルサミコ酢を大匙1かけて味をなじませる。フライパンから取り出す。
  3. 2. のキノコのうま味が残っているフライパンにオリーブオイルを足して、切干大根を出汁と炒め煮する。
  4. ジャガイモと人参をスライサーなどで千切り。ボールに卵を割り入れ、牛乳とマヨネーズを入れかき混ぜる。そこに千切りした人参とじゃがいも、チーズと切干大根を加える。
  5. 熱したフライパンにオリーブオイル(バターでもよい)をなじませ、4. のボールの中身を半分入れ、中火。優しく混ぜ火を入れる、トロトロぐらいになったらもう半分のボールの中身を入れる。真ん中にくぼみをつけ炒めたキノコを乗せる。
  6. 火入れが出来たら出来上がり。
    ※焦げてしまいそうな時はオーブンに入れる。または火を止めて、ホイルで蓋をして余熱調理。
  7. 5. の段階から耐熱皿に入れ、レンジで温めて 5. の状態を作り、そのままオーブンへ入れると簡単調理になります。
  8. 食べる時に、黒コショウを振ってお好みでバルサミコ酢をかけます。

アンケートのお願い】
この記事に関して、感想やメッセージなどございましたら、ぜひ皆さんの声をお聞かせください。佐久本さんからも下記のお願いがあります。
「皆さんのコロナ禍の中での食生活は、コロナ以前の食と何か異なるところがありますか? “こんなものをよく食べるようになった” など、何か傾向が見えたり、効果がありそうでしたら教えてください。次号でご紹介できたらと考えています」
         アンケートはこちらから>>>

佐久本 恵(さくもと めぐみ)
国際中医薬膳士/「色彩学校」専任講師

アートセラピーの現場で心の健康に携わり10年ほど経った頃、”体の不調は心の反映”という心身一如の観点に至る。そこから生活の中で出来るセルフメンテナンスとしての薬膳の勉強を始める。食へのこだわりは人一倍。美味しくて元気に繋がる日々のご飯を提案していきます。