自粛生活で家族が一緒に過ごす時間が増え、愛着を求める子どもには良い影響がある一方、家庭内暴力も増えています
Paik Naksun(ペク・ナッソン/韓国末永メソッド研究所代表)
ペクさんはソウル市で「色彩学校」や子どものアトリエを開く一方、行政の支援を受けてさまざまな場でセラピー活動を行ってきたが、コロナの影響で今はすべてストップ。子育て支援に力を入れてきただけに、閉鎖的な状況が家族関係にどう影響するか、気になっているという。
●コロナ流行の最中に「末永メソッド研究所」の引っ越しをしました
ちょうどコロナが進行していた3月1日、2006年から江南で始めた「末永メソッド研究所」を移転することになりました。前から考えていたことではありましたが、いろいろなタイミングが良かったので、思い切って移りました。
新型コロナウイルスの感染が徐々に拡大し不安もありましたが、静かな期間を利用して、引っ越しや整理ができてむしろラッキーでした。 新しい研究所は以前より小さい空間ですが、近くには韓国の伝統的家屋である韓屋(ハノク)が残る街並みや、gallery、国立現代美術館などの文化空間があるので会員たちはむしろ喜んでいます。
しばらく授業もなく、外部でのセラピーやワークショップ活動も全て中断された状態だったので経済的には厳しいですが、身の周りの整理を通じて自分自身についても考えてみる時間でした。 これから韓国で末永メソッドをどう展開していくべきかなどを具体的に考える自粛の時間になりました。
▲新しい「末永メソッド研究所」の外観。建物は韓国の伝統的な雰囲気を残す。
●政府からは支援もあるけれど、統制も……
韓国でのコロナ流行はある程度落ち着き、若者達がよく行く飲食店やカフェは多くの人が集まって楽しんでいます。しかし最近また感染者が出ているため、政府は敏感な状況です。官公庁や公共交通機関は必ずマスクを着用しなければなりませんし、学校は相変わらずオンラインで授業を行っているので、社会的に多様なことが起きている状況です。 ある大学では授業料返還に対するデモも起きています。
政府は緊急災難支援金の名目で全ての市民に経済的恩恵を与えており、年間売り上げが一定以下の中小企業や団体に2ヶ月間の支援があるので、当研究所もわずかながら支援を受けました。
しかし我が国は南北問題もあり複雑な政治状況なので、現政権に支持的な集会を除き、政策に対して批判や反対をするデモはもちろん、宗教集会など多くの部分においてコロナを口実に統制している現状が感じられます。
▲末永メソッド研究所のワークショップスペース。コロナ禍で様々な活動が停止状態になった。
●コロナ禍で、家族関係にも変化が起きてきています
家族関係にも変化が見られます。家族中心の生活になり長い時間一緒にいることが多くなったため、愛着に欠乏していた子どもたちが回復する場合がある一方、反対にストレスによる家庭内暴力など、たくさんの問題も起きています。
ひとつ、「色彩学校」の受講生家族の、良い変化の例をお話ししましょう。
両親と1男2女の子ども3人の一家で、母親はカウンセリングの仕事でいつも忙しくしていました。姉と兄は勉強で忙しく、誰にもかまってくもらえない末娘(小1)がいつも愛情を求め、心理的に大変な状況でした。
それが最近コロナの影響で、母親がしばらく仕事をできなくなり、姉とお兄さんもオンライン授業で家に一緒にいる時間が長くなったことで、自然と接触の機会が増えたのです。するといつの間にか末っ子の問題行動やイライラが消えていったそうです。
母親はこんなことを語ってくれました。「かつては、私の仕事が終わった後、子どもたちの面倒を見るため毎日大変でしたし、夫とのコミュニケーションもうまくとれていませんでした。でもコロナで仕事がなくなり、その代わり暇さえあれば、夫の会社に出向いて仕事を手伝ったりして、夫婦関係の回復をはかりました。また家では子どもたちが協力し合うようになり、家庭の平和が訪れたように感じています」。
この方はコロナの自粛期間中にむしろ時間に余裕ができたので、色彩心理の新たなコースを学びたいと申請してきました。 コロナ禍によって、自分に対して時間を投資できて、かえって有益だったそうです。
【ペクさんがワークショップで今の気持ちを表現した作品】
▲ペクさんの作品(A)
息苦しさを吹き飛ばそう。
▲ペクさんの作品(B)
「我が心の部屋」幼い頃、深い井戸の中に入っていたスッポンを急に思い出して表現した作品。はしごを作ってあげたのに、井戸の中にいる者は幸せそうだった。クリックすると動画がご覧になれます。
●「コロナから自由になる」というテーマで、展覧会を企画しています
5月になり、研究所で成人向け授業が小グループで始まりましたが、外部での活動はすべて途絶えています。 しかし、7月からオンライン(Zoom)で授業を行う予定です。
私もこれから動画講義やYouTubeなどを準備したいと思います。
こんな危機的状況の中ですが、絵を通じて心を表現できる武器があることに感謝します。
3月1日の引越し後、整理のため具体的な活動ができませんでしたが、「コロナから自由になる」というテーマで4月の1ヶ月間、表現を介した無料カウンセリングのような試みを行いました。ぬり絵をダウンロードして表現し、何について考えたいかを書いて送れば、私たちが対応するというイベントです。 多くの人が参加して相談を受けましたが、コロナによる心の恐怖というよりは、自分の個人問題に関する相談が多かったです。
また先日、「国際アートセラピー色彩心理協会」の会員の中で絵を描き続けたい会員が集まり、今後も継続して作品のシェアなどを共有し、展示会を開くことにしました。 これからは、以前とは違う環境が持続するという予測の下、内面の力を信じて、各自が誠実に自分を開発することで、周辺の人々にも良い影響を及ぼすことができると思います。 こういう時こそ、末永メソッドの真骨頂を広く知らせるべき時だと、確信しています。
▲末永メソッド研究所のオープニングワークショップに集まった受講生やスタッフの皆さん。
前列のブルーの洋服がペク・ナッソンさん。
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