末永蒼生の“クレヨン先生”通信〈親と子のための色彩心理入門〉画材シリーズ番外編「キャラクター」

【画材シリーズ番外編】

今回は色シリーズはお休みで番外編「キャラクター」の心理です。
アトリエでも多くの子どもたちがさまざまな「キャラクター」を描いたり、立体で作ったりしています。皆さんは子ども時代に憧れ、夢中になったキャラクターいましたか?

いつの時代も「キャラクター」は寄り添ってくれたり、励ましてくれたり、友だちだったり・・・そんな存在だったのではないでしょうか。
そんな「キャラクター」には一体子どもたちのどんな心理が現れているのでしょうか。子どもたちの作品と併せてご紹介しています。作品から心を感じ取れることを通して、きっと自分らしい自由な日々や子育てヒントになればと思います。

子どもはみんなキャラクターが大好き

現代の子どもの生活にはアニメやマンガ、あるいはゲームのキャラクターは欠かせませんし、すっかり子どもの生活に定着しています。
そもそも、なぜ子どもはキャラクターが好きなのでしょうか?
それは子どもの成長とともに、自意識が芽生えていくことと関係ありそうです。自分は何が好きなのか、何ができるのか、これからどんな体験をするのだろうか、自分ってなんだろう……。そんな自分への興味から、その時々の自己を投影できるいろんなキャラクターに魅力を感じるのです。キャラクターはいわば、自分を映し出す鏡と言えるでしょう。

子どもたちが興味をもつキャラクターは多様です。これは子どもたちの精神的な成長という点からとても興味深い現象です。子どもは日々さまざまな体験をしながらさまざまな感情を味わいます。落ち込んだり立ち直ったりという感情の波を生きているという意味では大人も子ども同じです。ダメな自分、誇らしい自分……。その自分を生きていくとき、それを映し出すもう一人の分身としてキャラクターに惹かれていくようです。

*6歳男の子*
最近お友達とも楽しく遊べるようになってきた。集団の中での自分の立ち位置を見出したころキャラクターを描くようになった

*小学2年生女の子*
2年生に進級と共に好きなキャラクターのテイストが変わった。“かわいい”から“少しお姉さん“へ憧れる気持ちが芽生えてきたよう

分身とともに育つパーソナリティー

キャラクターを描く、キャラクターを作るということは、つまりその子ども自身のパーソナリティーがしっかり育ってきている証拠かもしれません。これは、子どもが心理的に自分の分身を持ち始めたことを意味しています。
ですが、成長とともに惹かれるキャラクターが変化していくことがあります。可愛いキャラクターを楽しむ時もあれば、キャラクターの冒険や旅の物語を通して、困難に立ち向かう強さを学んでいく時期もあるでしょう。

中には、自分なりのオリジナルの“キャラクター”を見いだす時期もあります。ここで紹介するのは13歳の男の子の作品です。
今までは好きなキャラクターを作っていましたが、最近はオリジナルのキャラクターを作りはじめました。「キャラクターは自分の投影であることも多い」と先にも紹介しましたが、この子は自分で作ったキャラクターを戦わせ、殺し、また新しいキャラクターを作っては同じことを繰り返しました。

この創作で破壊と再生を繰り返しながら常に進化し、自己確立する力を養っていたようです。

アトリエ教室でも年中~小学校1年生くらいのお子さんで、時にドキッとするようなキャラクター(ゾンビなど)が登場することは珍しくありません。この年頃の子どもたちは小さな社会(小学校)に入る心の準備が始まることで、例えば「自分を強く見せたい」「負けたくない」気持ちを抱き、さまざまな状況をシュミレーションしながら、立ち向かう力を養っているのかもしれません。
子どもは、キャラクターという“自分の分身”をもつことで、自らの世界を拡げ、また時には自分を励ましたり支えたりして育っていくのです。

*小学1年生男の子*「信号機サイレンヘッドVS人間」
学校というたくさんの人が居る中で、「どう戦うか」シュミレーションしているかのよう

“お子さんの今の気分”を教えてくれるキャラクター

キャラクターと一言に言っても、人間だけではなく空想上の生き物や天使、悪魔、好きな動植物などさまざまです。男の子が武器やロボットを工作で作るときなどは何か強い存在に憧れ、自分自身の中の強いキャラクターを養っていると言えます。時に同じ男の子でも思春期前後には案外、カラフルな花の絵を描いたりもします。まさにその時々の心の変化や成長を引き出す現象がキャラクターに熱中する心理といっていいでしょう。

また、子どもによっては既存のキャラクターではなく、自分で考えた独創的なキャラクターを生み出すときがあります。そんな時は、とても個性的な感性や能力が育っていることでしょう。

*高校1年生男の子*
いつも笑顔で物腰も柔らかいS君だが、好きなキャラクターは「ダースベイダー」「仮面ライダーの悪役」。二面性が感じられ、思春期に入り複雑な気持ちの成長を感じる

今、皆さんのお子さんはどんなキャラクターに凝っていますか?キャラクターの話題というのは、とてもいいコミュニケーションの方法だとおもいます。お子さんにキャラクターについての話題を振ってみるときっと、得意になっていろいろお話ししてくれるでしょう。お子さんの“今の気分”が見えるし、成長が感じられ楽しいかもしれませんよ。
大人も一緒にあの頃夢中になったキャラクターの話しをしてみるのも楽しいですね。

今回ご紹介した「キャラクター」の心理も、実際には子どもによってもっと様々です。カウンセラーとお子さんとの関りやお子さん自身の状態なども含めてご紹介していきます。なにより創作した本人にとっての意味が大切です。創作から心の動きを自由に想像してみることを楽しんでください。