末永蒼生の“クレヨン先生”通信〈親と子のための色彩心理入門〉色シリーズvol.6「紫色」

【色シリーズvol.6】

子ども紫色や黒などばかり使っていると、何か性格に問題があるのではないかという質問を受けることがあります。
実際に「顔を描く時に紫を使って先生に注意されました。紫という色には何か心理的な問題があるのでしょうか?」というお声がありました。

むしろ、紫を使うということは、それだけ子どもが複雑な色彩を理解できるようになったことを示しているのです。赤が活気をイメージさせるとしたら青は静かな印象を与えます。この両方の気分を抱くということは、その子どもが心理的にも幅が広がったわけです。
年齢的には何でも自分でやりたがったり、親に反発してみたり、自立へ向けて成長してきたことを表しています。

色を心理的なイメージとして見ると、赤は活発な動き、いわば交感神経の働きを感じさせますし、青は落ち着いた時の副交感神経の働きを感じます。その両方を合わせた紫色は神経のバランスをとろうとするともいえます。興奮を鎮めたい時、逆に元気を出したい時に、紫は気持ちのいい色なのでしょう。

バランスを取り、自分を癒すことは《自己治癒》に繋がる

アトリエで小学1年生の男の子が「紫は嫌いな色!」と言いながら、たっぷり紫色を堪能した日がありました。
Yくんは小学校に進級してからも、「習い事も全部続ける!」と意欲的に取り組んでいましたが、ある日蕁麻疹が出てしまい、頑張りすぎていたことに気づきました。学校を1番に考え、習い事は一旦全部辞めることにし、アトリエも辞めることが決まった頃です。
どんなに意欲的でも体は1つしかありませんよね。
「きらい!」と言い続けながら創作するYくんには、きっと戸惑いや不安があったのかもしれません。1本ずつとげ抜きをしていくようにデトックスし、自分を労わり、癒した日だったようです。

ある日の3才の女の子はアトリエでたくさんのぶどうジュースを創りました。この日は両親共に出張で不在、祖母宅にお泊りの日でした。「お父さんお母さんが居ないのは寂しいけど、おばあちゃんと妹と頑張る」そんな気持ちを支えながらバランスを取ろうとしていたのかもしれませんね。

*Hちゃん 3才 「ぶどうジュース」*
4人家族だが、送迎やお泊りなどおばあちゃんと過ごす時間も多い

次に紹介するのは80代の女性が彩色したぬり絵です。
認知症と診断され、不安でいっぱいだった頃。紫の花をぬっていました。
紫の花に囲まれた真ん中の黄色い花は、「それ(診断)は間違いかもしれない、まだ大丈夫なんじゃないか」という期待や希望が感じられる作品です。

*「紫色の亀」*
学校で友達と同じペースで進むことが出来ずに悩んでいたが、マイペースでやっていこうと思えた(気持ちのバランスが取れた)頃に描かれた


日本では神社仏閣などには、昔から紫色の幕がよく使われています。きっと陽と陰の両極のバランスを保つ癒しの象徴、聖なる色として定着してきたのかもしれません(実際、昔は植物の紫根で紫色を染め出し、薬効があったのです)。
そのような知識がない子どもが、無意識のうちに紫を使うというのは不思議ですね。

いずれにしても、子どもが選ぶ色には善悪はありません。自分に必要な色を本能的に使うことで、自然に色彩セラピーをしていると思って見守ってあげましょう。
もちろん、大人にも有効だと思います。

*Rちゃん 小学6年生 「ハリネズミ」*
思春期のトゲトゲした気持ちを鎮めているよう

※今回ご紹介した紫色の例は色彩心理の調査に基づいた要素と、カウンセラーとお子さんとの関りやお子さん自身の状態なども含めてご紹介しています。なにより選んだ本人にとっての意味が大切なので、色から心の動きを自由に想像してみることを楽しんでください。