末永蒼生の“クレヨン先生”通信〈親と子のための色彩心理入門〉色シリーズvol.11「金銀」

日に日に寒さが増し、透き通った空気にキラキラとクリスマスの装飾が美しい季節が近づいてきましたね。クリスマスのオーナメントに、イルミネーション、キラキラと輝く世界に心惹かれるものです。

ひかりものは子どもだけでなく大人も好きですね。大人だってクリスマスのイルミネーションや宝石などの光るものに心が躍る方も多いのではないでしょうか?
一体そこにはどんな気持ちが隠れているのでしょうか?

大人気の2つの理由

色数の多いクレヨンや色鉛筆には金色銀色が入っていて子どもは好きですね。アトリエ教室でも、金銀の折り紙はもちろんのこと、キラキラテープやキラキラビーズなどのひかりものは人気画材!こういうひかりものに興味が出てくるのには2つの理由がありそうです。

一つは、キラキラ輝くものは目立つので心が弾み、子どもたちは楽しくなり興奮します。
もう一つの理由は、色の意味を見出して使いたくなるということです。

*年長女の子 「キラキラ模様」

心の中に育つ「知的理解力」

色の意味を見出して使いたくなるというのは、どういうことでしょうか。

たとえば、の象徴的な意味が分かってくるのは、5~6歳くらいからでしょう。本物のの価値を知り、その象徴としてクレヨンや折り紙などの金色銀色を特別に感じ始めるということです。

これは、じつは子どもの心の中に知的理解力が育っているという言い方もできるかもしれません。ここでいう知的理解というのは、単にキラキラする感覚的な面白さだけでなく、が世の中で価値があるとされている知識を知り、子どもたちなりに色にも社会的な象徴がこめられていることを理解するのです。大人でいえばファッションブランドに価値を託すことに似て、社会的な記号に気づくのです。

つまり、社会的な約束事が分かって初めてに限らずいろんな「色」が社会的記号でもあることを知るのかもしれません。

すると、絵の中でも大切なものに金色を塗ったり、ねん土で作ったアクセサリーにキラキララメなどを貼り付けたりするようになります。
こういう気持ちは、そのまま大人が金色を表現する心理にも通じるように思います。

ここで、アトリエで金色を表現した養育者Kさん30代女性の作品をご紹介したいと思います。
Kさんのお子さん(Hくん3才男の子)がアトリエに通い始めた頃から、Kさんはアトリエの端で自分の創作を楽しんでいます。この頃はお子さんが「奈良(東大寺)の大仏」にとても興味を持ち、家族旅行で奈良を訪れる頃でした。

3才のHくんは大きな大仏様に魅了されて興味を持ったことでしょう。もっと“知りたい!”“分かりたい!”と「知的探究心」が芽生えたのかもしれません。そんなHくんの興味や探究心を受け止めたKさんはその気持ちを一緒に確かめるように大仏のお面を造ったのです。
創建当時の金色に輝いていた姿をイメージしながら作ったかのような大仏です。大仏の金色は光り輝く幸せな人生を約束してくれるような“精神的な価値”の象徴なのですから。

*Hくんの母親kさんが2か月に渡り完成させた「大仏のお面」。お子さんも自分が興味を持ったことをお母さんが受け止めてくれたことは、3歳のHくんの能力をもっと引き出してくれることにつながっていくことでしょう。

気分も能力もキラキラと輝かせたい時

ここで紹介するのはYくん7才の作品です。
手先が器用で折り紙が得意なYくん。得意な「手裏剣」を金銀の組み合わせでよく作り、手順も仕上がりもばっちりです。ある日「もっと大きい手裏剣を創りたい!」と15cmの折り紙を4枚セロハンテープで繋げ30cm四方の折り紙を自作し、大きな「手裏剣」を完成させました。

*手順も折れ線も正確、美しい仕上がりの「手裏剣」意欲の高まりが折り紙の大きさに比例しているかのような作品となった

しばらくすると「蜘蛛折れる?途中まで鶴と一緒だけど変化していくんだよ!」と言いながら、器用に折り進めハサミも使用しながら行程も難易度もあがった「蜘蛛」を完成させました。日を重ねるごとに、彼の技術がぐんと伸びていることが分かります。
このようなステップアップの様子を見ていると、「金銀」の輝きは「技術や能力を伸ばし、発揮したい、輝きたい」そんな子どもたちの無意識の気持ちにぴったりなのかもしれません。

*集中力を発揮し手順よく器用に完成させた「蜘蛛」の折り紙

次に紹介するのはRくん小学3年生男の子の「剣」です。
学校や習い事が忙しく、アトリエも定期的に参加できないことが続いていました。アトリエに来てもアトリエ中を走り回り戦いごっこやたっぷり色水を堪能するといったカタチにならない創作が続いた頃です。それは、Rくんの抱えるエネルギーをどう開放していいのか……Rくん自身とても戸惑っていた頃ではないでしょうか。

そんなある日、スタッフが作った「剣」を見つけると「これ!」と創作のスイッチが入りました。
日頃抱えていたエネルギーは固い段ボールを切る力となり上手に外に出しながら、カラフルなキラキラテープを力いっぱい巻き、黙々と創作を続け立派な「剣」が完成しました。
Rくんがこれほどまでの創作力を持っていたことも驚きでしたが、なにより負けず嫌いで目立ちたいRくんにぴったりなキラキラカラフルに光って注目を集める「剣」です。Rくんが本来持つ能力や技術が作品となって引き出されたようでした。
その後もRくんが持つエネルギーは「盾」や「ヘルメット」などを作る力に替わり、次々と創作は続いていきました。作品が完成するごとに自信を再確認したかのように満足気で誇らしげな顔をしていました。

*Rくん 小学3年生 「剣」

光り輝くものは、気分を高め心を元気にしてくれます。お子さんはもちろんのこと、大人もふと光りものに惹かれた時には、大いにキラキラの世界を楽しみましょう!

※今回ご紹介した金銀の例は色彩心理の調査に基づいた要素と、カウンセラーとお子さんとの関りやお子さん自身の状態なども含めてご紹介しています。なにより選んだ本人にとっての意味が大切なので、色から心の動きを自由に想像してみることを楽しんでください。